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BLUE RECORD#024('97.10.1 RELEASE)
ブラジル経由・アフリカの夢
ブラジルの新しいプリンスが、岡山にやってきた。7月30日(水)岡山市民会館に、サンバでもない、レゲエでもない、そしてアフリカンミュージックでもない音楽をひっさげて“シコ・セーザル”がやって来た。
ブラジルはバイーア州(東北部の州で、ブラジルの背中のこぶに位置する州)出身の彼は、幼い頃から世界中の様々な種類の音楽に接する機会が多かった。多種多様な音楽を自身の中で消化した彼は、とりわけアフリカに思いを寄せ、現在の彼の音楽スタイルの源ともなる音を自然に産み出していった。
ブラジルの音楽文化をあまり知らない観衆が彼のコンサートをはじめて観ると、おそらくは「ブラジル人はあのような衣装を身に着けて、ブラジル音楽とはあのような音楽なのだろう」と、錯覚を起こしてしまうに違いない。それは彼が、アフリカでもなく、今までのブラジル音楽でもない“新しい音のスタイル”を築いてしまったからである。つまりそれは、新しい“シコ王国”の音楽といってもいい。それが、ブラジルの音楽シーンにおいても話題となり、シコ・セーザルなる無比なアーティストが人気を呼んでいる一つの要因でもある。
6〜7年前までサンパウロのライヴハウスで活躍していた(当時、その姿を見た日本人もいる)彼は、スペインで、世界的に有名なサリフ・ケイタとステージを共にし、後に、ブラジルでもステージを共にしている。
「日本で演奏できるなんて、夢にも思わなかった」と彼はいうが、シコ・セーザルが世界に出てゆくのは必然的なことのように思われる。
ちなみに、彼の作ったスーパー・ヒット曲に『Primeira Vista(ア・プリメイラ・ヴィスタ)』という一作がある。その曲の歌詞中に、「オー、マラザイヤソイエ、ザヤ、ザヤ、アインタ」というフレーズがあり、彼に出会うまで私はそれをアフリカ民族の言葉なのだと思い込んでいた。
まず、バックバンドのメンバーにこの言葉の意味を訊いてみると、「シコに訊いてくれ。おれ達も知らないんだ」との返事。続いて、身長160cmほどのシコ本人に訊いてみると、「意味なんて、なんにもないよ」と、一言あっけらかんに言われた。あの詩から、「アフリカの夢」を見ていた私は、ただ笑うしかなかった。
コンサートも終わりに近づいた頃、シコは観客からもらった薔薇の花を頭に差し、あげくの果てには、その日の昼に岡山城で買った三度笠をかぶって歌った。なんて陽気な男なんだ。
移民の国ブラジルは、世界中から運び込まれてきた多種多様な音楽のルーツを消化吸収し、世界中にブラジル音楽という名の独特な音を贈りかえしてくれた。その点において私は、ブラジル人は大天才だと思っている。が、世界中の国境がなくなり、その距離も次第にゼロへと近づいている昨今、シコ・ザエールのみならずブラジル音楽という音の存在は、ある特定の音楽ファンだけの所有物ではなく、誰もがみな目の離せない日常的なものへと化しているいるようだ。
TEXT/平松 伸行 (NOBRAIZ MUSIC)
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