Welcome, a BLUE RECORD OFFICIAL WEB!! This Page changed on September 1th, 1998.
![]()
BLUE RECORD#035('98.9.1 RELEASE)
![]()

TRIPLE X, LIVE IN CHIKEN GEORGE 1998.8.7 (Fri)
〜天然色の思い出〜
8月7日(金)、神戸のライヴハウス・チキンジョージに“TRIPLE X(トリプル・エックス)”のステージを観に行った。TRIPLE
Xはヴォーカルの桑名正博、ギターの河内淳貴、ベースの田辺モット、ドラムの岡本郭男が結成した4人編成のロックバンドだ。ぼくがTRIPLE
Xのステージを観るのは今回が2度目、7月に東京のライヴハウス・クロコダイルで初体験して以来、すっかりこのバンドのサウンドに魅了され、完全な“トリプル中毒”になってしまっていた。
東京でのマンスリー・ライブを終えたばかりの彼らであったが、関西でのライブはこの日が初日。開演前のホールにはTV局の取材カメラもセッティングされ、緊張した空気が張りつめていた。オープニング・アクトのパーション・グループの演奏により、観客の熱気は凄い勢いで膨張していった。客席の興奮が頂点に達したとき、一瞬、ステージの照明が消え、そして、ついにTRIPLE Xが登場。しばし軽いノリでワンコーラスだけ洒落た後、すぐさま、ドライヴの効いた河内淳貴のギターが炸裂した。ぼくは「この瞬間を待っていた」、という気分だった。すぐさま、桑名正博のギター・リフが、これもまた大音量で絡みついていった。
ぼくの感じるTRIPLE Xサウンドの最大の魅力は、各々のメンバーが叩き出す音そのものが、聴く者の耳に忠実に届けられるところにある。ベースのメロディー・ラインがバスドラのリズムに消されて聞き取れないなどということもない。ベーシストの田辺モットが押さえたフレット音の一つ一つは、岡本郭男の保持するリズムの上に抜群のタイミングで融合し合い、TRIPLE Xサウンドの核を絶妙なバランスでキープし続けているのだ。

また、河内淳貴のギターが素晴らしい。テクニック以前に、彼の創造する唯一無比な職人的なギター・ワークが、バンド全体のスタイルをしっかりとかため、それをストレートに打ち出している。
ハードロック・バンドというと、その言葉の響きからついつい硬質で、たっぷりとファズのかかったメタリックなスティール的サウンドを想像してしまう。が、河内淳貴の弾くギターの音には、心地よくカスタマイズされた自然なエフェクトが効いており、アンプから放出された瞬間には、人肌優しく、客席に向かって自然と“空気感染”していくかのような広域な世界が形成されている。しかも、硬派かつストレートだ。

桑名正博のヴォーカルには、以前にも増してよりパワフルで、より印象的な深みが感じられる。ハード色の強いロック・ナンバーで表現される力強さもさることながら、「レイダウン・ベイサイド」をはじめとする往年のミディアム・テンポなナンバーをTRIPLE Xで歌っているときの、彼自身の開放的な雰囲気は最高だ。コーラス・パートで絡みついてくるメンバーたちのバック・ボーカルも違和感なくはまっており、聴く者を圧倒する迫力が出る。

TRIPLE Xのナンバーには関西弁で書かれた歌詞も多く、桑名正博はそれをロックやブルースのリズムに乗せて巧みに表現してゆく。そこには、脂ぎったしつこさやくどさはなく、ヴォーカリストの個性が創り出す、ごくごく自然な形の、音の世界が広がっている。それはまさに、40代の大人が到達した音の広野だ。
暗いホールに3度目のアンコールがかかり、アコースティック・ギターを手に持った桑名正博が一人でステージに上がった。客席に向かって軽くジョークを飛ばし、「ある元和製フォーク歌手の哀愁」を歌いはじめた。
大和川で 釣り餌を変えながら
君から届いた初孫の写真
あれからすでに35年
川面に映る鉄橋に夕日が沈んで行く
忘れられない思い出がある
遠い昔のはなしじゃないさ
人はセピアに彩るけれど
俺には鮮やかな天然色の思い出…
遠い日の知人から届いた、初孫の誕生の知らせを歌に託していた。「目の前にいるアーティストは、もうずいぶんと長い間、こうしてうたい続けて来たんだな」と、ふいにそんな思いが胸をよぎった。それは単純なことであり、偉大なことであり、ヘビーなことでもあり、ラフなライフスタイルなのかもしれない。
いつしか、河内淳貴がステージに立ち、アコースティック・ギターのストロークにフォーキーなハープのフレーズを重ねていた。ラストコーラスでは、田辺モットと岡本郭男が現れ、重圧なリズムを作っていった。
これから先、夏が来る度にぼくはこの曲を聴いて、少し感傷的な気分に浸りながらゆくっりと歳をとって、2人の子どもの笑い顔をながめながら花火をし、遠くの街まで取材に行き、ギターを弾いたりMacintoshをいじりながら原稿を書き、原稿が書けない夜は、「そういえば31歳の夏に書いたトリプル Xのテキストもなかなか書けなかったな」と、苦笑いするのだろうか。
TEXT/YONEちゃん
indies

『WE ARE THE TRIPLE X』FUNNY RECORD-XXX001
特別リンク
特別付録