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BLUE RECORD#043('99.5.1 RELEASE)
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幻の怪獣アゴン、その恐るべきB級ぶりが明らかに!
かなり気合の入った特撮ファンや怪獣マニアでも、このアゴンという怪獣について
詳しく知っている人は少ないんじゃないかと思う。手元の文献や怪獣事典を探しても、アゴンについて触れたものは見当たらない。作品は日本電波映画社が1964年に製作したものだが、実際にTV放映されたのは4年後の68年のことだ。しかも正月の二日からの4日間で全4話が連続放映されて終わりという、実に素っ気ない扱いを受けている。ところがどういう訳か25年後の1993年になって東宝からビデオが発売されており、今のところこのビデオが、アゴンについて残された唯一の手掛かりではなかろうか。ビデオの内容は「アゴン出現」が前・後編で2話、「アゴン風前の灯」が前・後編で2話の合計4話構成となっており、脚本・監修として関沢新一の名前がクレジットされている。『電送人間』や『モスラ』、『海底軍艦』など東宝特撮映画の黄金期を支えた脚本家であり、かつ戦後歌謡界を代表する作詞家の一人として都はるみの『涙の連絡船』などを残した、あの関沢新一である。忘れ去られた幻の怪獣アゴンと関沢新一という組み合わせに、日本特撮界の光と陰の交錯を思い描くのはたぶん私ひとりではあるまい。
Copyright/1993 TOHO CO.,LTD.
昭和43年にTV放映された、幻の巨獣アゴン。深海より突如出現し、放射線物質を求め咆哮するアゴン。
迎え撃つ防衛隊との決死の対決。そして大都会は炎と化した!
アゴンというのはアトミック・ドラゴンの略で、作品の中で原子力センターの右京博士によってそう名づけられる。発達した後肢で二足歩行し、三つ指の前肢はグローブみたいに大きく、強力な武器となる長くて太い尾を持っている。ギョロリとした眼は顔の両側に離れており、大きな鼻の穴とティラノザウルスみたいな鋭い歯が威嚇的だ。岩のようにゴツゴツした肌で、頭から背中、尻尾にかけて三列の突起が並び、喉から腹にかけては白い。海底に眠っていた古代ジュラ紀の恐竜が核実験の影響を受けて突然変異したもの、という設定になっている。となれば誰だってゴジラを思い浮かべるだろう。個人的な感想を言えば、ゴジラが知能の発達した猫科の猛獣を思わせるのに対して、アゴンは両生類的な愚鈍な不気味さを感じさせる。けれども海からの登場、全体のフォルム、火を吐くところなど、これはどう見てもゴジラの二番煎じ、三番煎じという印象を免れない。またアゴンが放射性物質を好んで食べるという設定は、核戦争の危機が声高に叫ばれていた時代背景を反映している。毎回、本編が始まる前に原爆のキノコ雲が映され、「我々は第三の火を手にいれたことによって、輝かしき未来の繁栄を約束された・・・然しそのために、もう一ツの扉をノックしたことを忘れてはならない」という、科学文明批判めいたナレーションが大きな字幕つきで繰り返される。そしてビルを壊し、火を吹くアゴンが登場する。だがそうした大げさな前振りに見合うだけの、スケールの大きな展開が本編の中で描き出されることは最後までない。
残された全4話のビデオから判断する限り、アゴンは徹底したB級作品としての宿命を負わされている。予算や技術の不足、企画の甘さなど原因は様々だと思うが、アゴンそのものだけでなく、登場する人物の設定やキャラクター、セリフやギャグの質、プロットや特撮のレベルに至るまですべてが絵に描いたようにB級なのだ。そうしたB級作品にはつかみどころのない曖昧さがつきものだが、アゴンの印象も例外ではない。全編に流れるあの音楽とも効果音ともつかない独特のBGM一つを取ってみても、妙に間の抜けた寂しさ、目的のはっきりしない不安、行き場のないもどかしさといったものを無意味に画面に漂わせているだけだ。
アゴン登場の舞台となるのは原子力センターのある東海地方の磯浜海岸だ。ある台風の夜、ウラン運搬車が何かに遭遇して崖から海へ墜落する。情報を仕入れた毎朝新聞の「スッポンの五郎」こと須本五郎が現場に駆けつけると、警視庁科学Gメンの大和刑事と原子力センターの右京博士が捜索の指揮を取っているが、手がかりはつかめない。と、突然ガイガー計の針が激しく振れ、にわかに海が怪しく泡立ち、ジュラ紀の恐竜を思わせる大怪獣が姿を現す。これが物語の発端だ。後日、原子力センターを訪ねた五郎と大和は、博士からアゴンについての仮説を聞き、助手の静川さつきを紹介されるが、そこへ再びアゴンが現れて上陸し、暴れる。が、暴れるとは言っても実際には松の枝がバラバラ落ちてくるだけで、特撮と呼ぶにはあまりにもショボい。転んで足を痛めたさつきは逃げ遅れ、倒木に足を挟まれ、地割れの中に転落する。ここまでが第1話だ。
続く第2話では五郎と大和がさつきを助け出し、アゴンはウラン物質を求めて原子力センターを破壊する。アゴンが原子炉の爆発によって死んだのかどうかは明らかにされぬままだが、右京博士は核実験と放射能灰の深海廃棄でアゴンを蘇らせた人間の自業自得を説き、アゴンが再び現れると主張する。博士の依頼を受けて警戒体制を敷いていた防衛隊は、やがて現れたアゴンに対して戦車部隊や戦闘機による攻撃をかける。この防衛隊の出動シーンには、自衛隊の実弾演習や飛行デモンストレーションの様子を収めた記録フィルムが使われており、一方アゴンが炎で焼き尽くすジェット機や戦車のミニチュアの方は作りも貧相で、そのイメージの落差は大きい。海岸の防衛線を突破したアゴンは岬の灯台を破壊して暴れるが、このシーンではアゴンの大きさと迫力が作品中最も印象的に撮られている。博士の指示で大和がウラン燃料を積んだジープをアゴンに向かって突っ込ませると、ジープを手に取ったアゴンは、向きを変えて海の中へと姿を消す。
第3話と4話から成る「アゴン風前の灯」では、漁村の入り江に沈んだ麻薬入りのトランクを引き上げようとする黒田と鉄のチンピラ二人組が、狂言回し的な役を演じている。二人は松造という漁師を騙して入江に潜らせるが、トランクのそばにはアゴンが眠っていて手が出せない。深海にいるはずのアゴンがこんな浅い海にいるというのも納得のいかない展開だが、一計を案じた黒田が原子燃料研究所に忍び込み、素手で(!)濃縮ウランを盗み出すというのはもっとすごい話だ。目覚めたアゴンは、松造の息子の紋太とトランクを乗せたボートを咥えたまま再び上陸し、人命を優先する防衛隊は攻撃を中止せざるをえない。五郎の提案でヘリが飛ばされ、レンジャー部隊が縄梯子を降ろして紋太を助け出そうとするが、アゴンに叩き落とされる。そりゃそうだよ。アゴンの目の前でヘリが音を立て、縄梯子がぶらぶらするんだから…。責任を感じてしょげ返る五郎はさつきに慰められるが、再び暴れ始めたアゴンは近くのコンビナートへと向かう。右京博士はヘリでウラン燃料を運ばせてアゴンの進路を誘導し、紋太も無事に救い出される。五郎は麻薬の詰まったトランクをウランと一緒にアゴンに飲み込ませる作戦を思いつくが、黒田たちにウランと麻薬を積んだヘリを奪われてしまう。調子に乗った黒田がアゴンの周りを飛びながらからかっていると、いきなりアゴンが火を吹いてヘリを捕らえ、飲み込む。大量の麻薬で断末魔の苦しみにもがくアゴンは、コンビナートで暴れて火だるまになる。「科学をもてあそび、人類の得た知識を過信し悪用する者に、アゴンは最後の審判を下すであろう」というナレーションを背に、アゴンは全身から煙を出しながら海の中へと姿を消してゆく。このときアゴンはすでに大怪獣というスケールを失い、どう見ても人間と同じサイズにしか見えないあたりが、また言いようがなく物哀しい。
全編を通してテーマ曲もなく、サウンド面では明らかに手抜きか未完成と言う他はないし、果たして毎週の連続ものとして作られたのかどうかもはっきりしない。そこにどんな意図があってアゴンは産み落とされ、4年間のお蔵入りの挙げ句に特価処分のように放映され、そして忘れ去られたのだろうか。もし当時のTV放映を見た人やもっと詳しい話を知っている人がいたら、ぜひ本誌まで連絡下さい。
TEXT/世良利和
DATA
製作:松本常保
脚本:関沢新一「アゴン出現」, 内田弘三「アゴン風前の灯」
監督:峯徳夫 「アゴン出現」, 大橋史典「アゴン風前の灯」
出演:広田進司(=須本五郎), 松本朝夫(=大和刑事), 志摩靖彦(=右京博士), 沢明美(=静川さつき)
入江慎也(=松造), 小林芳弘(=紋太), 福山象三(=黒田), 野崎善彦(=鉄), 東悦次(=アゴン)
撮影:河原崎隆夫
監修:関沢新一
音楽:斎藤 超
美術:鳥居塚誠一
録音:竹川昌夫
照明:松本久男
特撮:影山晴紀
特技監督:大橋史典
製作年:1964
放映年:1968
製作著作:日本電波映画株式会社
ビデオ発売元:東宝株式会社
ビデオ発売年:1993
ビデオ型番:TG4461
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