BLUE RECORD#076 (2002年2月1日 発行号)

アナログジェネレーション VOL.5 '78 Analog's

文・HAJIME YONEDA(mail to:marlboro@bluerecord.com

   

 

   

  • 松田優作/LP『Uターン』/ビクター
  • Char/LP『THRILL』/キャニオンレコード
  • ジョー山中/LP『武道館ライヴ』/アトランティック
  • CREATION/EP「暗闇のレオ」/TOSHIBA-EMI
  • 矢沢永吉/LP『GOLDRUSH』/CBSソニー
  • 甲斐バンド/LP『誘惑』/TOSHIBA-EMI
  • サザンオールスターズ/EP「勝手にシンドバッド」/ビクター
  • 水谷 豊/EP「表参道軟派ストリート」/フォーライフレコード
  • 世良公則&ツイスト/LP『Twist』/キャニオンレコード
  • 桑名正博/LP『テキーラ・ムーン』/RCA

  •  今回アナログジェネレーションでとりあげるのは、1978年にリリースされたの日本ロックのアナログ盤。まずはみなさん御存知の、中島みゆきの3rdアルバム『愛していると云ってくれ』('78年4月リリース)から。というのは、もちろん“な〜んちゃって”だ。聴いちょらんのだから、書けん書けん。と言いつつも、女性読者のためにちょっとだけ前フリしますから、'78年という時代を軽く把握してくださいね。
     中島みゆきのデビュー作は、『みんな去ってしまった』('76年10月)です。翌年『あ・り・が・と・う』('77年11月)を発表、そして『愛していると云ってくれ』('77年4月)となります。2枚目の『あ・り・が・と・う』と、3枚目の『愛していると云ってくれ』の間に出したシングル曲こそ、かの有名な「わかれうた」。つまり今回は、中島みゆきの「わかれうた」が流行っていた頃のアナログレコードのお話です。えっ、中島みゆきも「わかれうた」も知らないって?! それはこまった…。じゃ、もう1発補足しとくと、ユーミンが「埠頭を渡る風」を収録した『流線型'80』('78年11月)を出し、サザンオールスターズが「勝手にシンドバッド」でデビューした頃のお話です。これでOK?

     '78年は、かまやつひろしの1st ライヴアルバム『ムッシュ・ファースト・ライブ』('78年1月)で幕を開けた。内田裕也のデビュー20周年にあたる年だ。この年、内田裕也は自らを“ロックBAKA”と称し、初の全曲オリジナル・アルバム『A DOG RUNS』をアトランティックからリリースしている。このアルバムには沢田研二(ジュリー)がヒットさせた「決めてやる今夜」を含む全10曲が収録されており、楽曲を提供者には元キャロルのジョニー大倉、桑名正博、ミッキー吉野、宇崎竜童、かまやつひろし、沢田研二、近田春夫といった豪華な面々が名を連ねている。ロックンロールのスタンダード曲をカヴァーして唄う“ロケン・ロール節”のユーヤではなく、日本人アーティストの作った日本語歌詞のロックを内田流に消化し、強烈な内田流和製ロックの世界を作り上げてしまった。同年、内田は日活映画『桃尻娘』に登場し、『エロティックな関係』では私立探偵役で主演した。その辺りの詳細は、映画評論集『その映画に墓はない(世良利和 著)』に任せるとして…。
     『A DOG RUNS』で内田流和製ロックの世界を提示した彼のスタイルは、'80年代に入りレイモンド・チャンドラーの小説世界をコンセプトに制作されたアルバム『Farewell, My Lovely』へと引き継がれてゆき、そのラスト収録曲「ローリング・オン・ザ・ロード」で唯一無比なパンチを放った。孤独な男が描かれた乾いた歌詞の世界を内田裕也のヴォーカルが心情たっぷりに表現している。それでいて泥臭くならず、さらりと唄いこなしているところがいい。ちなみに、「ローリング・オン・ザ・ロード」は緒方拳が主演した映画『野獣刑事(デカ)』のエンディング・テーマに起用され、バーボン・レーベルからリリースされた萩原健一(ショーケン)のアルバム『DONJUAN(ドンファン)』でも耳に出来る。

     '78年は、上田正樹が『PUSH & PULL』、有山淳司が『ありのままのじゅんじ』、大塚まさじが『海と空、月と闇』、憂歌団が『四面楚歌』と『ブルース'73〜'75』、泉谷しげるが『'80のバラッド』、井上陽水が『WITE』、岡林信康が『セレナーデ』、遠藤賢司が『東京ワッショイ』、加川 良が『駒沢あたりで』、金子マリが『SHOOT THE MOON』、カルメン・マキが『ライブ』、南 佳孝が『サウス・オブ・ザ・ボーダー』、サンハウスが『ドライヴ』、近田春夫が『電撃的東京』、ゴダイゴが『西遊記(マジック・モンキー)』、クールス・ロカビリー・クラブが『デッド・ヒート日比谷』、甲斐バンドがライヴ盤『サーカス&サーカス』と『誘惑』を、クリエイションの竹田和夫がTVドラマ『ムー一族(いちぞく)』のテーマ曲「暗闇のレオ」を収録した1stソロアルバム『ミスティ・モーニング・フライト』を、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドが映画『曾根崎心中』のサウンド・トラック『曾根崎心中』を、ジョー山中が『武道館ライヴ』、桑名正博が名曲「月のあかり」を収録した『テキーラ・ムーン』をしたリリース年で、坂本龍一が1stソロ『千のナイフ』を発表した年にあたる。役者陣では萩原健一が『Nadja 2.男と女』、松田優作が『Uターン』を発表した。

     松田優作の『Uターン』は、カメラマン・立木義浩が撮影したジャケット写真のカッコよさに痺れた。ジャケットの帯に刷られた「終わりかけた夏が、Uターン」のコピーもカッコいい。「ヨコハマ・ホンキートンク・ブルース」は入っていないけれど、映画『殺人遊技』の主題歌「夏の流れ」がラストに収録されていて、「あさって野郎」「ひとよ酒」「心臓のハードパンチ」などの名曲も多い。'80年代に入り、アルバム『タッチ』『HARDEST DAY』でブルース・シンガーとして成熟してゆく彼の原点は、この『Uターン』に収録された「うわきのブルース」ではなかろうか。西岡恭蔵が、愛妻・KUROの書いた歌詞に曲をつけ、それを優作が荒削りなボーカルで不器用ながら心を込めて唄い上げている。
     この曲を聴く度、昔、恭蔵さんの家に初めて電話した際、緊張しすぎて舌がうまく回らなかった無礼を想い出す。この年、西岡恭蔵は矢沢永吉の4作目のアルバム『ゴールドラッシュ』に「昨日を忘れて」を書いた。

     『ゴールドラッシュ』は矢沢永吉を全国区スターへと成らしめた作品だ。TV CMに起用された「時間よ止まれ」が収録されており、ジャケットのインパクトも強烈だった。が、アルバムとしての完成度は、前作『ドアを開けろ』('77年4月)の方を高く評価したい。'70年代の矢沢がアーティストとしての頂点を極めたのは『ドアを開けろ』であって、『ゴールドラッシュ』はチャートの頂点を極めた作品に過ぎない。

     '78年には、バーボン・レーベルから日本ブルース・ロック史を語る上で欠かすことの出来ない名曲をリリースしたバンドがいた。バンド名は、柳ジョージ&レイニーウッド。2ndアルバム『雨に泣いている〜WEEPING IN THE RAIN』からアルバムタイトル曲「雨に泣いている」がシングルカットされ、大ヒットを飛ばしたのだ。萩原健一が主演したTVドラマ「祭ばやしが聞こえる」のテーマソング(1stアルバム『Time in Cange』に収録)を担当した彼等は、この年、萩原健一の全国ツアーに参加していた。
     アルバム『WEEPING IN THE RAIN』は、英語詞と日本語詞で構成されており、ボーカルの柳ジョージがそれを違和感なく唄いこなしている。ニュアンス的には、唄いこなしているというよりむしろ、英語で唄っても日本語で唄っても、柳ジョージならではのリズム・アンド・ブルースの世界が展開されているといった方がしっくりとくるだろう。英語詞の「HEAVY DAYS」が映画『仁義なき戦い』(根津甚八が主演した回)のエンディングに流れても違和感がなかったぐらい、柳ジョージの唄う英語詞は極端にアメリカナイズされたものではなく、日本語ブルースと全く同じ距離感で耳に馴染んでくる。その理由は、3rdアルバム『YOKOHAMA』('79年3月)を聴き、彼の発する英語のルーツがアメリカ本土の英語ではなく、横浜英語であることから納得できた。

     世良公則&ツイストが「あんたのバラード」を収録した1stアルバム『Twist』をリリースし、続いて、チャーがシングルヒットを飛ばした「闘牛士」を収録した3rdアルバム『THRILL』をリリースし、'78年は幕を閉じた。

    TEXT by HAJIME YONEDA(marlboro@bluerecord.com


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